線に強弱がなければ、単調な人物表現になってしまいます。ロートレックや、ワイエスといった、巨匠たちのクロッキーやドローイングをみていただければわかるように、線に強弱がついています。線に抑揚をつけてみましょう。
筋肉や骨格の移り変わりなど、形が変わっているところは必ず影が出来ます。陰影をとらえることで立体感をつくりだすことができます。クロッキーでは特に、その陰影を速くとらえて影をつけて描くことで、立体感をつくりだせます。
モデルさんにはあえてじっと動かずにポーズをとっていただいていますが、人物は本来動くものです。ギリシャ彫刻をイメージしていただくと分かるように、ギリシャ彫刻は特によく人物の動勢をとらえています。
クロッキーは描く時間が短いので、はやく描くポイントを選び出し、それをとらえて描いていくことが大切です。線の使い方次第で、人物の動勢(ムーブメント)や一瞬の緊張感を描きわけられます。
皮膚の下の筋肉と骨格をみつけて、しっかりと意識しながら描かないと、どこかしまりのない体型のクロッキーになりがちです。そうならないためには、骨格を正確にとらえて描くことが大切です。皮膚の下の筋肉と骨格を意識して描いてみてください。
↑ 大河原愛作品 *元講師 大河原愛先生が10代の頃美大受験のために描かれたデッサン
人体をアカデミックに、見えるままに描く表現手法を学ぶことも大切ですが、ある程度デッサン力が身についたら、デフォルメにも挑戦していきましょう。あえて意図的に体のフォルムを見えるままに正しく描かず、崩して描いたり、一部を誇張して描いたりする技法が「デフォルメ」です。
エゴン・シーレや、フランシス・ベーコンの作品などが良い例です。「デフォルメ」という技法を身につければ、個性的な作品をつくりあげていくことができます。ただし、良いデフォルメができるようになるには、相当なデッサン力が不可欠です。正確に描写するデッサン力も同時に鍛えていきましょう。
力強く激しい線というものをみたことがあると思います。また、か細く繊細な線もあれば、人を不安にさせるような震えた線など、様々な線があることからも分かるように、線には、感情を織り込むことができます。
自分の感情を線に置き換えてみましょう。線に自分の思いを込めることができれば、クロッキーで、見る人の心を打つ感動的な作品をつくることができます。
クロッキーは、デッサンと違い描く時間が短いので、細かな指の一本一本など、全てを描ききることはなかなかできません。どこを描くのか、またどこを省略するかの判断が絵の出来を決める大事なポイントでもあり、作家の腕の見せ所でもあります。ワイエスの人物クロッキーも、顔だけ描いて身体をぼかすなど、「省略」というテクニックを巧みに用いています。
クロッキーの描き方や表現に制約はありません。恐れずにいろんな画材や表現を試してみて、自分に一番合った画材と表現を見つけましょう。描いたクロッキーを、コラージュしてみたり、額に入れてみたりして「作品」にしてみてもいいですし、クロッキーからタブローを描くこともできます。表現に制限はありません。さまざまな表現方法があります。クロッキーから学んで作品をつくるという意識が、絵の質を高めます。また、絵を通して自分の思想や感情を表現する、自己表現するという意識で描き続けていくことも大切です。そうすることで、躍動感のある線や情緒豊かな線が生まれ、絵が活き活きとしてきます。
東京クロッキー会は、人物画やヌードクロッキーの表現力向上のため、ヌードデッサン講座やヌードクロッキー勉強会を開催しています。
ーーヌードデッサン講座資料より 文章の無断転用を禁ず。
東京クロッキー会ではヌードクロッキー会を毎週行っております。詳しくは
http://www.tokyoarts.netをご覧ください。
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プロの画家にヌードデッサン、ヌードクロッキーのコツを教わる勉強会を作りました。
本格的な人物デッサンの基礎を学んでみたい方におすすめの勉強会です。
しっかりした人物デッサンを描くテクニックを一度身につけてみてください。
そうすると、クロッキーの表現力もあがり、絵の質が全く変わってきます。
講師は全員プロの画家で、美大の授業と同じような形式で行います。
← 講師大河原愛作品(大河原講師が10代の頃美大受験のために描いた木炭デッサンです)